2014/02/28

あるところに、1人の男子中学生がいました。

2014年2月01日 初稿
2014年2月03日 修正
2014年2月09日 修正
2014年2月14日 修正
2014年2月25日 修正
2014年2月28日 投稿
2017年6月11日 新ブログへ移設
inspired by“あるところに、普通の童貞がいました。

あるところに、1人の男子中学生がいました。
彼は本を読むのが好きでした。
ネットサーフィンも好きでしたが、1日30分までと言われていました。
でもそれに特に不満はありませんでした。彼は家で遊ぶのが好きでした。でも、遊ぶことがなくてもよかったのです。
「暇」が苦痛ではない、そんな中学生でした。

ある日、彼の家にプロバイダからの情報誌が送られてきました。
彼はちょうど読んでいた本を読み終わり、読むものがなかったのでその情報誌を読むことにしました。
そこには、当時流行りはじめていたとあるオンラインゲームについて書かれていました。
今まであまりゲームをしなかった彼は、インターネット上の2つ目の生活に、なぜか憧れたのです。

彼はそのゲームをやってみることにしました。1日30分ではダウンロードとインストールだけで終わってしまうでしょう。
でも彼は気にしませんでした。
なんとかインストールを終え、彼はワクワクしながらゲームを起動してみました。
彼の母親も興味があったようで、後ろで眺めています。
彼ははじめてそのゲームの世界に降り立ちました。
何をすればいいのか、まったくわかりません。
彼は、赤ん坊とはこんな気持ちなのだろうかと、忘れてしまった14年前を想像しました。

情報誌には、とある車のメーカーがある島に工場か何かを作っているらしく、そこで秘密のコードを入力すると車がもらえると書いてありました。
彼はとりあえずそれを目当てにしてみることにしましたが、その島にどうすればいけるかもわかりませんでした。
試行錯誤していると、パソコンの画面が奇妙に点滅しました。
何かの不具合なのでしょうか、驚いた彼は少し考えた後、時計に目をやり、そして電源ボタンを長押ししました。

しかし彼はオンラインゲームに興味を持ってしまいました。
右も左もわからないあの感覚に取りつかれたのです。彼は別のゲームをやってみることにしました。
少し前の新聞に、オンラインゲームで少年がサラリーマンから金をだまし取ったというニュースがありました。
彼にはそれも新鮮でした。絶対的強者である大人から、少年が詐欺をしうるという世界、とても面白いと思ったのです。
そのゲームは「メイプルストーリー」というゲームだそうです。彼はそのゲームをやってみることにしました。

彼はまた試行錯誤しながらメイプルストーリーをインストールしました。
少しだけ、最初にゲームをインストールしたときより慣れた気がしました。
そして彼は別の世界に降り立ちました。

そこは崖から飛び出した橋の上のような場所でした。自分のほかにも何人かいるようです。
みんなグレーのTシャツを着ています。自分と同じような境遇のように思えました。
彼はそこからどうすればいいのか、やはり見当が付きません。
よく見ると、1人だけ恰好が全く違う人がいたのでクリックしてみると、「初心者教習所に行きますか?」というようなことを言われました。
本当の初心者は、初心者教習所に入るまででかなりの時間が過ぎるのです。

彼は青リンゴのコスチュームで初心者教習所に入りました。
そこでは職業の紹介や、かわいらしい白いもこもこを殴ったりしました。
彼は「魔法使い」という職業に興味を持ちました。なぜかはよくわかりませんでした。

彼は初心者教習所を卒業しました。初心者教習所の出口の人が、ここから外は広い世界だ、というようなことを言いました。
「外の世界」には最初の画面にいたような、自分と同じような格好の人がたくさんいました。
彼は社交的な性格ではなかったので、自分から話しかけようとは思いませんでした。
でも、そんな彼に話しかけてくる人がいました。彼もまた、初心者のようです。
その人は彼に「友達になろう」と言いました。彼もそうしようと思いましたが、2人とも「友達になる」ためにどうすればいいのかわかりません。
彼はまた驚きました。現実はあいまいな「友達でいる」ということに手順が求められる、この世界に。
なんとか彼らは友達になりました。そして、彼らはしゃべって協力して冒険しました。
数時間たち、彼らは最初の島を出ることになりました。
船に乗った彼らは新たな街に降り立ちました。時計に目をやると、30分はとっくにすぎていました。
彼は、友達に自分はログアウトしなければならないと伝えました。
「またね」と言葉を交わした友達と、彼が会うことは2度とありませんでした。

でも、彼はその友達の名前を今もはっきりと覚えています。

それから彼は魔法使いになるべく冒険をしました。
どうすれば魔法使いになれるのか、それもわからないままに。
右往左往した彼は、エリニアという街を目指せばいいらしいことを突き止めました。
彼は、右へ歩き出しました。
何度赤い色の殻のでんでんむしに殺されたことでしょうか。ようやくコツをつかんだ彼は、ヘネシスという街に到着しました。
そこには彼がいままで見たこともないほどの数の人がいました。
その街を抜け、彼は森に向かいました。エリニアはそちらのようです。
途中、緑色のキノコに殺されましたが、都合よくエリニアという街で復活しました。

彼は「能力値」という概念に悩みつつ、なんとか魔法使いになったのです。
それから彼は、魔法使いとして冒険を始めました。
まだまだわからないことばかりです。魔法使いなのに能力値をDEXに振ったりもしました。横殴りの意味が分からずに横殴りをしたこともあります。
そして彼は知らず知らずのうちに、自分で調べる術を手に入れたのです。

その調べる過程の中で、彼はブログというものに出会いました。
彼はそれ以前にホームページを作ったことがありましたが、ブログというものはよくわかりませんでした。
たくさんのブログを読むうちに、自分も書いてみたいと思うようになりました。
そこで、彼はブログを作ってみることにしました。ブログの作り方はわかりませんでしたが、彼は自分で調べる術を手に入れたので、大丈夫です。
なんとかブログを作った彼は、ブログのタイトルに悩みました。
悩んだ結果、「メイプルプラザ」というタイトルにしました。理由はよくわかりませんでした。

彼はどんどんメイプルストーリーにのめりこみました。
学校はただ勉強をしに行く場所だと思いました。友達なら、メイプルストーリーの友達でいい、そう思いました。
ただひたすら、彼はメイプルストーリーで遊びました。

ある日、彼はカニングシティーで行われた鬼ごっこに参加しました。彼はあまりに熱中し、ついに彼の母親が怒り出しました。
「そんなにやりたいなら、自分のPCを買いなさい」そう言った彼の母親は、その時どう思っていたのでしょう。
でも彼は、ならパソコンを買おうと決意したのです。その週末、彼は電器屋に行き、ノートパソコンを買いました。

彼のメイプル熱がさめることはありませんでした。
そんな中で彼はとある企画と出会いました。まだ構想からまさに実際に行われる、という段階の企画で、各サーバーの代表者を募集しているようでした。
かえでサーバーの代表がまだいないのを見た彼は、自分がやろうと考えました。
なぜだったのかはわかりません。彼はすでに、学級委員長をやりたがるタイプではなくなっていたはずなのです。

彼は1か月に1回のその企画がとても楽しみでした。
彼はかえでサーバーでの企画の運営の片翼を担っていました。
しかし彼は自分のせいでスムーズに行っていないことに気づいていました。
運営として、少しはリーダーシップを持たねばならないと、彼は思いましたが、どうやら自分は向いていないのではないかということも薄々感じていました。
それでも彼は名乗りを上げた者として活動をつづけました。
その企画はある冬の日、この世界が再構築されるまで続きました。

一晩にして世界は変わりました。と神は言いました
しかし彼は、その世界を前の世界と大差ないように感じました。
地図が、敵が少し変わったようですが、ログインすると友達やギルドの人たちがいるのは変わりない光景でした。
彼にとって世界とは、彼の友達だったのでしょうか。

ある冬、メイプルストーリーに没頭していた彼が、メイプルストーリーをお休みしなければならない日がやってきました。
別にお休みしなくてはいけないわけではなかったのでしょう、でも彼はお休みしようと決めていました。
1年間、やらなければならないことがありました。次の春、笑ってメイプルストーリーに戻ってこれるように頑張ろうと、彼は決意したのです。

それから1年間、彼はメイプルストーリーを全くやりませんでした。
寂しいときはメイプルストーリーのBGMを聞きました。BGMを聞くだけで、そのマップが、そのマップで起きたことが、自然と思い出されます。
彼はそれを糧にがんばろうと思いました。

春、彼は自らたてた目標を達成し、笑ってメイプルストーリーに戻ってきました。

しかし“世界”は変わっていました。

彼にとってのメイプルの世界は、彼の知り合いだったのです。
その時、彼はそれを疑問形ではなく、断定として捉えることができました。
1年間の時を経て、彼の知り合いのほとんどは、メイプルストーリーからいなくなっていました。
それでも彼は、またメイプルストーリーを始めてみることにしました。

夏になり、秋になり、冬になりました。
彼は確信してしまいました。これは彼がかつて遊んだメイプルストーリーではないと。
そう確信したとき、あれだけ熱中した世界が、彼には色あせて見えました。

こうして思い返すと、彼はどれだけのことをこの世界から学んだのでしょうか。
この世界がなければ、今の彼はいなかったでしょう。

そんなことを考える彼は、1人の男子大学生になっていました。

0 件のコメント:

コメントを投稿