2016/11/03

都電荒川線散策記

【2016/10/27】

暑かった夏が終わり,ようやく清々しい秋がやってくるかと思っていたが,9月はどうもしっくりこない天気が続いていた.
10月に入りようやく秋らしい天気がやってきたが,10月に入ったということはすなわち学校が始まったということであり,せっかくのいい天気を満喫できない日ばかり.
久しぶりに清々しい天気と休みが重なったので,とあるキップを握りしめて出かけることにした.

そのキップとは東京1DAYきっぷ.
京急発行のこのきっぷは,泉岳寺までの往復と東京都交通局の地下鉄・バス・新交通・都電の1日乗り放題きっぷがセットになった“お得なきっぷ”.
横浜からの値段は1130円.泉岳寺までの往復を除いた部分を東京都交通局が都営まるごときっぷとして発売しており,これが700円.
割引分が京急の往復にかかっているとすれば,横浜→泉岳寺の片道がが310円なので,割引率は1-{(1130-700)/(310*2)}=1-(430/620)=0.30……ということで,3割も割り引かれている計算になる.

貧乏性なのでどれだけお得かを確認しつつ,横浜から京急線快特に乗車.
平日の午前中だが,横浜で大量の乗客を吐き出した快特には,それに満たないまでもそこそこの乗客が乗り込み車内はそこそこの乗車率.
やはり京急で都内へ向かうなら途中まで急行を使ったほうがいいなあ……と思いつつも,思ったより出発時間が遅くなってしまったので素直に快特に乗る.

乗車した快特は2本に1本の泉岳寺止まり.泉岳寺で浅草線に乗り換え,一路浅草へ.
新橋を過ぎたあたりでサラリーマン風の乗客は軒並み降車し,車内はだいぶガラガラになった.
車内にいるのは,は浅草かスカイツリーにでも行くのであろう外国人観光客と,修学旅行の雰囲気を漂わせる高校生,そして人生のモラトリアムを謳歌する私くらいのものだ.

目指すは都電荒川線の始点,三ノ輪橋だが,三ノ輪橋への鉄道アクセスは東京メトロ日比谷線しかない.そして東京1DAYきっぷではメトロに乗れない.ではどうするか.
鉄道がないなら,バスに乗ればいいじゃない.
東京1DAYきっぷは都バスにも乗ることができる.そこで,浅草雷門から都バスにのって三ノ輪橋を目指すことにする.
途中で日比谷線に乗り換えればいいだろうという指摘はごもっともだが,せっかくフリーきっぷがあるのでこれを最大限に使ってみたい.
……単にケチなだけか.

利用するバスは「草43系統 足立区役所行き」.
浅草の……確かA4出口とかそんな感じの出口だったと思うが,そこを出て一区画向こうの道路にある「浅草雷門」バス停からそのバスは出る.
バス停へ向かうとちょうどバスがやってきた.たまたま時間がちょうど良かったが,この草43系統はそれほど本数が多いわけではないようなので,もしこのルートで三ノ輪橋へ行こうとするなら,前もってある程度の時間を確認しておいたほうがいいだろう.
……まあ,そんなやついないと思うが.

ここ浅草雷門は草43系統の始発.ここから乗り込んだのは私1人.
バスが進むにつれて少しずつ乗客は増えたが,どうもあまり需要のある路線ではないようだ.本数の少なさからある程度予測はついていたが……

「三ノ輪橋」停留所でバスを降りる.降り立ったのは車がひっきりなしに通る国道4号線.
こんなところに本当に都電の停留所があるのか……?と思いつつ,地図を頼りに路地に入ってみる.

都電荒川線 三ノ輪橋停留所.
交通量が半端ではない日光街道のすぐ近くに,東京に残された最後の路面電車の停留所はあった.
関東の駅百選にも選ばれるらしいこの駅は,春には花が咲き誇ることで知られるらしい.

都電を電車と見るなら,ここは「駅」と呼ぶべきだろうが,正式には「停留所」と言うらしい.
停留所とは多くの場合バス停のことを指すわけだが,こうしてみるとなかなかどうしてバス停の雰囲気も感じる.
都電荒川線は料金170円均一.これもバスっぽいし,路線案内もどことなくバス停に貼ってあるそれに近いような気がする.

乗り方もよくわからないので地元民らしき乗客についていく.
どうやら前乗り後降りらしく,乗車の際に運賃を払うらしい.これも料金均一だからできることだろう.というか,都市圏のバスの乗り方のそれである.
私は都電乗り放題の東京1DAYきっぷなので,運転士に見せて都電に乗り込む.

ドアが閉まり,「チンチン電車」の愛称の源となったベルが鳴り,三ノ輪橋停留所を出発.
都電荒川線は「路面電車」なのだが,よく想像される路面電車と異なり,普通の鉄道と同じような専用軌道を走る割合が大きい.
それが首都東京で唯一荒川線だけが残った要因でもあるのだが,バス雰囲気溢れる都電も,走りだせばやはり鉄道なのだと実感する.

せっかくの乗り放題なので,そのまま終点に行くのはもったいない.
そこで意味もなく停留所で降りてみる.やはり停留所はどことなくバス停の雰囲気を感じる.
しかし駅の近くには踏切があって,鉄道のように都電が通過していく.

グルと回って再び停留所の近くへ.それにしても空が青い.
これからの季節,寒いのはつらいがこんな天気が増えると思うとなんだか嬉しくなってくる.

この信号では都電と道路が交差しているのだが,踏切というわけではないらしい.
遮断器はなく,むしろ都電側が信号に従っているようだ.やはり電車なのかバスなのかわからない存在だ.

駅……ではなく,停留所に戻ると,三ノ輪橋行きの列車?がやってきた.
道路の信号が赤になり,車の流れが途切れるとそろりと道路を渡り,停留所へ入ってきた.
早稲田行きもやってきたので乗車.

また少し進んで停留所で降りる.
近くには再び路地に踏切.都電は車と鉄道の隙間にあるのだなあと実感する.

遠く見えるのは町屋停留所.
三ノ輪橋から進んで初めての他鉄道との接続駅である.
短い都電が行き交う上を,ピカピカの京成が通り過ぎていく.

都電荒川線の沿線はバラで緑化しているらしい.
バラと言っても種類が色々あって,見頃はそれぞれ違うのだろうが(花は詳しくないので適当),ここ町屋の近くのバラはちょうどいい具合に咲いていた.

バラを見ていると,ちょうど青い色をしたわりかし新しめの都電が走り去っていった.

京成の町屋駅を通り抜けると小さな広場のようなところがあって,そこにもバラが生えていた.
先程のとは色が若干違うようだ.

町屋から再び都電に乗る.
ここから先は道路の真ん中に都電用のスペースがあるらしく,さながら専用車線を走るバスのようだ.

少し進むと「荒川車庫」がある.
都電の車両が休むその地の入り口は,一般的な車両基地のような高い柵で囲まれるでもなく,えらく開放的であった.

せっかくなので車庫の回りをぐるっと一周.
止まっていた車両をよく見ると「バス特」の文字が.どこまでもバスらしさを醸し出す.

再び都電に乗り込み京浜東北線と接続する王子停留所へ.
都電の上を京浜東北線が,そのまた上を東北新幹線が走る.都電はどこまでも陰の存在だ.

新幹線高架の下は大規模な駐輪場になっていて,数え切れないほどの自転車が止められていた.

柱には「電車に注意」の文字が.あくまで都電は電車というささやかな主張に見えた.

王子停留所から少し歩くと飛鳥山公園なる小高い丘を見つけたので,少し登ってみる.
無料で乗れるモノレールでも登れるらしいが,往路は歩いてみることにした.

モノレールの頂上の駅からは都電荒川線,京浜東北線,東北新幹線がよく見える.
しばらく眺めていると,京浜東北線の高架の下から都電がニュッと現れた.
ここから暫くの間,都電は路面電車らしく車に紛れ道路を走っていく区間になる.

再び都電に乗り込み今度は山手線と接続する大塚停留所.
都電の上には山手線がちらりと見える.

もっとゆっくり見て回りたかったが,出かけるのが遅かったからか三ノ輪橋から町屋の間でゆっくりしすぎたせいか,時間がなくなってきたので大塚から終点・早稲田へ.
王子から先の少しの間と,ここ終点早稲田の手前の一部区間以外はほとんど専用軌道で,あまり路面電車らしさは感じない.
この“らしくなさ”が都電荒川線の鉄道と車の狭間感を生むのだろうか.

路面電車と言えば,東京の路面電車が荒川線しか残っていないように,そして多くの都市で路面電車が既に存在しないように,過去の存在と見られがちである.
都電荒川線も閑古鳥が鳴いているのだろうと思ったが,実際は地元の住民の足として多く使われているようで,むしろ混み合っている列車のほうが多いくらいだった.

富山県富山市に見られるように,LRTという新たな形の路面電車が世界中で注目されている.
日本では宇都宮でLRT建設が計画されていて,今後も目が離せない.
首都・東京に唯一残った路面電車がこの先どう進化していくのか,今後の展開が楽しみだ.

【完】

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