2016/10/01

サンライズ瀬戸・出雲+新幹線 VS 航空機 ―東京→西日本都市圏早朝アクセス対決―

瀬戸内旅行でサンライズ瀬戸を使ったとき,対高松・対出雲の輸送がメインじゃないんじゃないの…?みたいなことを書いた.
その根拠は隣のサラリーマン風のおじさんが岡山から先新幹線に乗り継ぐ風であったからだが,では実際どの都市に向かうのであれば,サンライズ+新幹線の組み合わせが有利なのか!?ということを検証してみたい.

今回の検証の概要は以下の通り.

  • 東京から西日本の各都市のアクセスについて,出張等で午前中にできるだけ早く到着したい場面で,鉄道・航空機両交通手段の最速到着時刻を調べる.
  • 対象とする都市は岡山以西および四国に位置し,総務省の定義による大都市圏・都市圏の中心都市となっている各都市とする.
  • 鉄道の起点は東京駅,航空機の起点は羽田空港とする.羽田空港へのアクセスはここでは考えない.
  • 目的地は両手段とも目的地都市の中心駅とする.
  • 鉄道は前日夜にサンライズ瀬戸・出雲を利用し岡山もしくは四国内の停車駅で乗り継ぐケースを考える.
  • 航空機は当日朝,首都圏各地からのアクセスを鑑み,6時半以降に羽田空港を離陸するANAまたはJALの便を利用することを考える.
  • ダイヤは2016年10月平日のものを利用する.

さーいってみよう.


対岡山アクセス

西日本が誇る大都会岡山県岡山市への午前中アクセス比較.

対岡山・鉄道

東京 22:00発
↓サンライズ瀬戸・出雲
岡山 6:27着

対岡山・航空機

羽田空港 7:10発
↓JAL232便
岡山空港 8:20着 8:50発
↓バス
岡山駅 9:20着

対岡山比較

圧倒的鉄道有利…なのだが,逆に早く着きすぎる感もある.
航空機利用は「羽田7時10分発」と軽々しく言っているが,これに乗るためには場所によるが始発に乗って羽田に向かわないと厳しいところも多いだろう.
一方サンライズは7,8時間は横になることができる.
ちなみに,新幹線VS航空機で新幹線に軍配が上がるのは新幹線がおよそ3時間で到達できる範囲というのが定説だが,東海道・山陽新幹線を東京から使うと,ちょうどここ岡山あたりがおよそ3時間のラインとなる.
それを考えれば,対岡山では早朝アクセスも日中アクセスも鉄道有利ということになるか.


対松山アクセス

四国唯一の都市圏,松山都市圏の中心都市.四国に疎い私はてっきり高松が一番栄えているのかと思ってたゾ!
四国には新幹線が走っていないので(北海道新幹線開業でJRのうち唯一新幹線をもたないのが四国になっている),番外編感はあるが在来線特急乗り継ぎと航空機でのアクセスを比較することにする.

対松山・鉄道

東京 22:00発
↓サンライズ瀬戸
高松 7:27着 7:37発
↓特急いしずち1号
松山 10:05着

対松山・航空機

羽田空港 7:25発
↓ANA583便
松山空港 8:50着 9:00発
↓バス
松山市駅 09:15着

対松山比較

航空機強し.8:50に空港着で10分後のバスに乗れるのかというと怪しいが,その後のバスに乗ってもまだ鉄道より早い.
鉄道の敗因は四国内での乗り継ぎの悪さ.
本来であれば坂出で松山方面の特急に乗り継ぎたいところだが,高松まで行って引き返しても同じ特急に乗ることになる(のでモデルケースでは無駄に高松まで行った).
この坂出-高松往復分でおよそ1時間のロスが生じている.もしサンライズ瀬戸を坂出で降りてすぐに乗り継げる特急があれば,航空機と到着時間で殴り合いできる状況になるだろう.


対広島アクセス

再び本州に戻って広島大都市圏の中心都市広島へのアクセスを比較する.

対広島・鉄道

東京 22:00発
↓サンライズ瀬戸・出雲
岡山 6:27着 6:51発
↓みずほ601号
広島 7:26着

対広島・航空機

羽田空港 6:50発
↓JAL253便
広島空港 8:15着 8:30発
↓バス
広島駅新幹線口 9:15着

対広島比較

岡山でサンライズからの乗り継ぎをしろ!と言わんばかりに調度良い時間帯にくる山陽・九州新幹線みずほ601号に乗るとなんと8時前に広島に到着することができる.
一方航空機は空港についた時点で8時過ぎ,アクセスの悪さから広島駅に着く頃には9時を回っている.
前述の「3時間ライン」から言えば,東京から新幹線でおよそ4時間の広島は航空機に分があるわけだが,空港のアクセスの悪さのためか,昼間の新幹線VS航空機も割りと新幹線が健闘しているらしい.


対北九州アクセス

一気に九州へ飛んで,北九州・福岡大都市圏の中心都市のひとつ,北九州へのアクセスを比較.

対北九州(小倉)・鉄道

東京 22:00発
↓サンライズ瀬戸・出雲
岡山 6:27着 6:51発
↓みずほ601号
小倉 8:12着

対北九州(小倉)・航空機

羽田空港 6:30発
↓ANA239便
福岡空港 8:15着 8:41発
↓福岡市地下鉄空港線
博多 9:16着 9:32発
↓のぞみ18号
小倉 9:48着

羽田→北九州の便数が少ないので福岡経由のほうが早く着く(少しの差だが).
北九州空港利用の場合は以下のとおり.こちらのほうが乗り換えが少ないので楽といえば楽.差は20分ほどだし.

羽田空港 7:40発
↓ANA3873便
北九州空港 9:20着 9:35発
↓バス
小倉駅新幹線口 10:08着

対北九州(小倉)比較

九州まで来ても鉄道有利.東京からの日中新幹線アクセスは4時間半ほどかかるので,日中だと航空機が圧倒的有利.


対福岡アクセス

北九州・福岡大都市圏のもう一つの中心都市,福岡へのアクセスを比較.

対福岡(博多)・鉄道

東京 22:00発
↓サンライズ瀬戸・出雲
岡山 6:27着 6:51発
↓みずほ601号
博多 8:29着

対福岡(博多)・航空機

羽田空港 6:30発
↓ANA239便
福岡空港 8:15着 8:41発
↓福岡市地下鉄空港線
博多 9:16着

対福岡(博多)比較

小倉同様,日中のアクセス対決では圧倒的に航空機有利.福岡空港便は本数もかなりあるし,空港から中心部へのアクセスも良いからだ.
差は縮まってきたが,早朝アクセスではまだ鉄道が少し早い.


対熊本アクセス

2015年国勢調査で大都市圏に昇格予定の熊本.

対熊本・鉄道

東京 22:00発
↓サンライズ瀬戸・出雲
岡山 6:27着 6:51発
↓みずほ601号
熊本 9:04着

対熊本・航空機

羽田空港 6:40発
↓JAL623便
阿蘇くまもと空港 8:25着 8:45発
↓バス
熊本駅 9:40着

対熊本比較

同じことの繰り返しになるが,日中アクセスでは航空機圧倒的有利だが,早朝(というほど早い時間ではなくなってきたが)アクセスではここまで来てもまだ鉄道が早い.


対鹿児島アクセス

最後は最南端の都市圏,鹿児島都市圏の中心都市鹿児島へのアクセスを比較.

対鹿児島・鉄道

東京 22:00発
↓サンライズ瀬戸・出雲
岡山 6:27着 6:51発
↓みずほ601号
鹿児島中央 9:48着

対鹿児島・航空機

羽田空港 6:40発
↓ANA619便
鹿児島空港 8:25着 8:50発
↓バス
鹿児島中央駅 9:30着 

対鹿児島比較

ここに来てようやく航空機が辛うじて勝利.
さすがに岡山から3時間かかる鹿児島では,新幹線でも及ばないらしい.


対西日本都市圏アクセスにおける航空機対策としてのサンライズ瀬戸・出雲

なんでこんなことを一々調べて書いたかというと,世の鉄道ファン・マニアのみならず「鉄道評論家」みたいな肩書の人までもが,「こうなったらいいな」レベルの妄想を「ぼくのかんがえたさいきょうのれっしゃ」として記事にしてたり本を書いたりしている現状を憂えて,少しはまともに経営の視点から分析するような記事を増やすためである(一応そういう分野の学生だからだ).
世の「鉄道評論家」は(それ自体胡散臭い肩書だと思うが),何というか発想が「子供」すぎる.
「こうすれば実現できる!」という実行可能性についての議論はするのだが,「では鉄道会社がわざわざそれをするのか?」という点を無視している例があまりに多く,あくまで願望のレベルを出ないからだ.
ここでいう「わざわざ」とは,何らか追加の投資をしたり組織内での調整をするといった意味で,つまり,いま現存する列車を存続させるか否かというレベルではなく,自ら何らかのアクションを起こしてまでやる意義があるのか,という意味である.

そもそも鉄道ファンという集団とはどういうものなのかという点については機会を改めたいが(これは本気でいつか書きたいと思っている),私自身は自分を鉄道ファンだとは思っていない.
以前(10年位前のこと)はそうだったかもしれないが,今はむしろ自分の学習分野の対象として,割りと冷めた見方をしつつ興味の対象としている.

例えば2年前の帰省のとき,最後のブルートレインとなっていた北斗星に乗って北海道へ行ったわけだが,あれ自体は素晴らしい経験だったし,もしブルトレが残るならそれはとても嬉しいことだと思う.
ただ現実には新幹線開業でブルトレは全廃となったわけで,それはしかたのないことだと思っている.
だが,それをここをあーしてこーしてどうこうすればブルトレは残すことができた!とか言っている(自称)評論家を見ていると,ああこいつバカだなあと思ってしまう,という意味では非常に冷めている.
鉄道会社が“わざわざ”あーしてこーしてどうこうする動機がなかったからこうなったのに,何考えているんだろう,と.

というわけでブルートレインはなくなってしまったが,寝台特急としてはサンライズ瀬戸・出雲が存続している(客車ではなく電車特急なのでブルトレではない).
これ自体は喜ばしいことだが,例えば現在使っている車両の寿命が来た時,新たに投資をして新しい車両を作ってまでサンライズ瀬戸・出雲は存続されるのか,という点について考えたいと思った.
この記事はそのための材料のひとつとして,西日本各都市圏の朝のアクセスという点から航空機との比較を行ったわけである.

結果から見れば,熊本までサンライズ+新幹線が有利,鹿児島でも互角.
航空機利用の場合は早朝から家を出て羽田へ向かう必要があり,かつ到着の時間に結構ズレがある.
サンライズ利用の場合は前日夜に東京駅に行き,そこから6時くらいまでは横になって休むことができる.かつ,到着時刻も航空機よりは安定していると言えるだろう.
その点,(松山を除く)西日本各都市圏への朝のアクセスではサンライズ+新幹線の利用は出張リーマンのファーストチョイスに成り得る魅力を持っていると言える.
(松山アクセスもサンライズからの乗り継ぎに無駄のない時間設定の特急が設定されれば航空機と戦えると思うが,前述のようにそれをわざわざするだけの需要があるのかという点は別途考えなければならない.)

そのように考えれば,サンライズ瀬戸・出雲がJR西日本,そしてサンライズ瀬戸・出雲に直接関係しないJR九州に与える影響が見えてくる.
前述のように,日中の新幹線VS航空機の対決では,せいぜい広島あたりが互角になるが,それ以西は航空機が圧倒的に有利になる.
ところが,サンライズ瀬戸・出雲の存在によって,午前中早い時間に着きたいというニーズから,サンライズ瀬戸・出雲からの乗り継ぎ先として山陽・九州新幹線への需要が生まれる.
本来東京からのアクセスでは航空機が圧倒的に有利になる九州の大都市の需要を,状況は限定されるが新幹線に取り込むことが可能になってくるわけである.

首都圏-京阪神の移動で航空機を圧倒し,数分間隔で『のぞみ』が行き交う,“ドル箱”東海道新幹線とは異なり,山陽・九州新幹線は圧倒的な利益を叩き出せる路線ではない.
サンライズ瀬戸・出雲の設定で,東京からの需要を少しでも取り込むことができるとすれば,特にJR西日本に取っては列車を設定する意義のあるものになる.
仮にサンライズ瀬戸・出雲単体の利益創出力が弱かったとしても,「いやでもこれは山陽新幹線の需要増に繋がっているんです」と言うことができれば,少なくとも言い訳にはなる.

サンライズ瀬戸・出雲に使われる285系は数年前にリニューアルされた.
リニューアルされたということは暫くの間はサンライズ瀬戸・出雲は安泰となるだろうが,問題はその後,完全に老朽化し置き換えが必要になるタイミングを乗り越えられるか,ということになる.
上述のように,JR西日本にとっては山陽新幹線の需要創出という“言い訳”をもって新車の投入に乗り気になる可能性はあるが,そうなると問題はJR東海の動向になる.
JR東海はサンライズ瀬戸・出雲の設定で他の付随的な需要が発生するわけではない.
よってJR東海にとっては,単純にサンライズ瀬戸・出雲で利益が出るか否か,そしてその利益の大きさが新車をわざわざ投入するのに見合う大きさか,ということが問題になってくる.
(もちろんJR西日本にとっても大きな問題である.いくら“言い訳”を用意しているとはいっても,サンライズ自体が全く利益にならないならやる気にならないだろう)

ここまで見てきたように,サンライズ瀬戸・出雲には山陽・九州新幹線の付随的需要を生み出す力があると推測できるが,現存車両を使った列車の存続には問題なくとも,車両に寿命が来た時,新たに車両を作ってまで存続するかという点は別問題であり,それはサンライズ瀬戸・出雲自体の(特にJR東海管内での)利益の大きさによるだろう.
サンライズ自体の利益については,車両の減価償却のみならず,運転士や車掌や途中駅の駅員の人件費なども含めて様々な要素が絡み合う問題となるため,ここですぐに検証することはできない.
この点を今後の課題とし,サンライズ瀬戸・出雲が山陽新幹線の需要を創出する可能性を航空機との比較によって指摘したところで,この記事を〆たいと思う.

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