2015/11/24

緩やかに死んでいく田舎の鉄道路線

JR北海道の来春80本減便方針 沿線自治体 現状維持、望む声強く

JR北海道は来年3月のダイヤ改正で普通列車約80本を減便(区間短縮を含む)する方針で、対象列車の沿線自治体に利用状況などを説明し、理解を求めている。大幅な減便となる路線の沿線では現状維持を求める声が強い一方で、「やむを得ない」と諦めも広がりつつある。減便と引き換えに、JRに地元の観光振興への協力を求める“条件闘争”の動きも出始めている。

(中略)

減便に対する自治体からの反発は強い。「地方の足を守るのがJRの役割。(減便は)絶対反対だ」。空知管内新十津川町の熊田義信町長はこう語気を強め、JRの姿勢を批判した。同町は、札沼線の終着駅の新十津川駅を観光振興に生かしていく考えだったが、同駅発着の列車が現在の1日3往復から1往復に減ることが伝えられ、戸惑いを隠さない。

JR北海道の来春80本減便方針 沿線自治体 現状維持、望む声強く

いよいよJR北海道の合理化が本格的に始まろうとしている。本業で赤字を垂れ流しつつもなあなあでここまできたわけだが、事故が多発したことでついに赤字の元凶にメスが入れられることになったようだ。遅すぎる、と言えばそれまでなのではあるが。減便の他にも一部の駅の廃止、無人化、廃線など、これからどんどん合理化は進んでいくだろう。私が以前住んでいた場所の近く(北海道基準)の駅も、無人駅になるんだとか。(元地元民から言うとあの駅、駅員いたんだ…というのが正直な感想ではある。)

「減便しまーす」、と言われるとその地域はだいたい反対する。それが自然だとも思うが、よく考えると反対の理由は一体何なのだろうか。新十津川町の町長は「地元の足」と言う。じゃあどれくらいの人が使ってるんだよ、と調べると学園都市線の北海道医療大学以北の輸送密度は2013年度で81人だという。いくら周辺自治体の人口が少ないからと言ってもこの値で「地元の足」というのは無理があるだろう。ついでに言わせてもらうと、学園都市線の末端部沿線は周辺住民が日常的に使うような施設もあまりない。せいぜい高校がいくつかあるくらいだったはずだ。高齢者が使う病院も学園都市線沿線にはなく、並行する函館本線沿線に多少ある程度だ。だいたい、地元の足として路線を守れ、と言う割に観光振興に活かしたいという時点で、地元の足それ単体として路線を成立させられないことを自ら白状しているようなものだろう。

学園都市線といえば、私が小学生の頃から「廃止されそう」と言われ続けてきた。それでも、711系がしぶとく近年まで現役だったように、どう考えても(文字通り小学生が見ても)儲かっていなさそうな路線は今日も運行を続けている。それもだいたい「地域の足」の名の下である。だがよく考えるとおかしい、JR北海道は最早国鉄ではなく、民間企業だからだ。こう言うと、だいたい「JRは民間企業とはいえども、鉄道という社会インフラを維持する責任が~」などという話になる。現実的にJR北の株主は独法だし、それも一理あるといえば一理ある。その「責任」のもとにあぐらをかきつづけ、赤字だけどまあなんとか路線は存続するんだろうと楽観していた周辺自治体の考えは甘かったと言わざるをえない。JR北海道自身がその責任を自負するのはいいが、それを赤字垂れ流し地域が主張するのは、ちとおこがましいと言わざるをえないだろう。

これまで見逃されていたのにここにきて廃止になるのは、一連の不祥事の余波というのもそうだが、車両の老朽化も関わっているようだ。鉄道車両は高い。既存の赤字路線の設備、車両を保守するだけならまだしも、新たな投資をして車両を投入するのは現実的ではない。JR東日本だったら儲かっている首都圏に新車を投入してその玉突きでボロを田舎に回しただろうが、残念ながらJR北海道が儲かっている路線で、地方でも使えるディーゼル車はほとんど走っていない。詰みである。

繰り返しになるが、自治体の読みが甘かった。車両はその辺に勝手に生えてくるようなものではない。そのことを考慮に入れず、今までなんとかなっていたからこれからもどうにかなるだろうと高をくくり、いざどうやら危うくなってきたぞと認識したときに(そもそもその時点では危うくなってきたどころか最早虫の息なのではあるが)慌てて「観光資源として活かそうと思っていたのに!」なんて言うのは、おもちゃを片付けるのを先延ばしにして母親に怒られるガキと大差ない。

観光といえば、廃止報道があって「秘境駅を観光資源にしようと思ってたのに!」と言っていた小幌駅だが、あちらは豊浦町がその維持費を負担することで存続できないか模索しているらしい。(「秘境駅」小幌駅 管理費10年で3千万円 豊浦町にJR見通し)10年間で3000万円。歳入の半分を地方交付税交付金で賄う地方の自治体が果たして払える額なのか。豊浦町は鉄道ファンの寄付やふるさと納税で賄えないか考えているようだ。確かに、この手のことに関して鉄道ファンは金払いが良い。廃車となった車両の保存に寄付を募ったら平気で数百万円集まったりする。

ただ、廃車の保存であれば最初にまとまったお金が必要になり、その後は保守管理に少々掛かる程度で済むが、小幌駅を存続させようとするなら、毎十年3000万円必要になる。最初はどうにかなっても、その後どうにかできる保証はない、というか無理そう。更に言うと、小幌駅を存続させたとして、鉄道ファンがその秘境っぷりを見に訪れたとして、十中八九豊浦町の経済には何の利益ももたらさない。彼らは鉄道で秘境駅を訪れ、そして鉄道で帰っていくだけだからだ。じゃあ駅でグッズ販売でもする?それ、「秘境駅」に対する冒涜じゃないですかね。

こうなってくるともう、何のために「観光資源」として駅を残そうとしているのか意味がわからない。寄付を募って足が出た部分は町民の税金でなんとかするんだろうか。でもそれは町の経済にメリットはほぼ無いし、秘境駅たる小幌駅は新十津川町のように「地元の足」ともならない。周りは樹海、家はないからだ。ちなみに道路もない。

「何のために駅を残したいのか」「何のために鉄道路線を残したいのか」、その問いに対する答えは何なのか。「地元の足」?利用者ほとんどいませんけど。「観光資源」?ほとんどメリットなさそうなんですが…

もう、ただの意地にしか見えない。「おらが村に鉄道を」の精神である。そのためにJR北海道に尻拭いさせ続けた結果が今の状況である。それでも数少ない利用者のために残すべき、という論理は国鉄ならどうにかなったかもしれないが、JRに対しては弱い。各所で言われるように、国鉄の分割民営化の時点で(そして北海道を単独で分割した時点で)この未来は確定していたとしか言いようが無い。

数少ない利用者の交通の便を確保しようとするなら、誰かしらがその尻拭いをしなければならない。ただそれをJRに押し付けることはもうできないし、間違っているだろう。ほんとうに必要なら自治体でコミュニティバスでも運行すればいい話なのだ。

そしてこれは笑い事ではない、明日は我が身だ。日本全体で人口は減り続け、首都圏でさえ未来の鉄道需要は減少しているはず。いざ廃止されそうになって大騒ぎするなんて愚かな真似をすることのないよう、やれることはさっさとやり始めたほうが良い。

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