2015/03/28

インターネットと著作権について知っておくべきだと私が思うこと

 旧ブログで以前、「著作権について言いたいことあるからそのうち記事を書く」と言って、例の如く放置していた。
しかし今、著作権法関連で大きな動きがあってもおかしくない流れになっており、書くなら今しかないのではないかという思いが湧いてきた。だから今書く。
この記事では我々が知っておくべきなのではないか、と私が思ういくつかのトピックについて(ゲームとその動画投稿についてが主だ。)私が今まで勉強してきたことを基に書こうと思う。
私は法律を特に勉強しているわけではない(法学部の学生じゃないということ)ので、認識に誤りがあるかもしれない。もし詳しい方でそれに気づかれた方がいらっしゃれば、指摘していただけるとありがたい。

 旧ブログはメイプルストーリーについて扱ったブログで、当然読者層はメイプルストーリープレイヤーが多かった。
今では下火になったが一時期動画サイトへのメイプルプレイ動画のアップは頻繁に行われていて、「みんなで動画をアップしよう!」みたいな企画もあった。(そしてそれがこの記事の構想のきっかけでもある。)
前提条件としてメイプルストーリーを考える上でまずひとつ特筆すべき点は、メイプルストーリーの運営元であるネクソンは著作権に関して割と寛容だということだ。
ネクソンの著作権ガイドラインを見ていただければわかることだが、SS利用に対して制約が少ない。
画像一枚一枚にコピーライト入れろ、などという制約もない。
当時(00年代中盤~後半)、オフゲーが画像の公開はダメ!と少なくとも表面的にはなっていたことを考えれば(後述するが今はそうでもない。)非常に先進的であり、それがメイプルブログの勢いを加速させていたとまで言える。
こちらの体験談も参考になる。)
 だからまずメイプルプレイヤーは、自分のゲーム関連著作権に関する認識がユルユルでガバガバである可能性を考えなければならない。
メイプルの常識は他のゲームの非常識である可能性があるのだ。
それ以前に、上述のネクソンのガイドラインを見てもらえるとわかるが、実はネクソンは動画については一言も触れていない(良いともダメとも)。
「動画?1秒に30枚の画像を使ったスライドショーですけど?」と言い張れば通るのかもしれないが、ガイドラインの見方によっては動画についてはグレーと読めなくもない。
もっとも、公式で動画コンテストなんて行われているくらいだから実態としてはセーフになっているのが現状だろう。
ただし、それは暗黙の了解としてである。

 動画を作るにあたり、ゲーム外からBGMとして音楽を取ってくるというケースがあり、メイプル動画にも多かった。
その音楽の権利に関してはもうネクソンの手を離れているわけで、寛容なネクソンとは違う基準で判断される。
しかしその辺りの認識が甘いケースがあったのではないか、と私は考えている。
特に、前述の「みんなで動画アップしよう!」みたいな企画では尚更、今まで動画を作って投稿したこともない人が動画作成方法を学びアップロードしたりするわけで、著作権についての知識がない可能性もある。
そんな中で、音楽の著作権について以下のような認識を持つ人がいた。

1.動画サイトが著作権者とまとめて契約してるからアップしてもいいんでしょ?
 1-1.
 ある意味正しくて、ある意味間違っている。確かに、例えばニコニコ動画は2008年4月1日にJASRACと包括契約を結んでいる。

 日本音楽著作権協会(JASRAC)とニワンゴは2008年4月1日、ニワンゴの運営する動画投稿サイト「ニコニコ動画」におけるJASRAC管理楽曲の二次利用を包括許諾する契約を締結したと発表した。これにより、JASRACが管理する音楽著作物を使用した動画を、ニコニコ動画へ自由に投稿可能になる。

ニュース - JASRACとニコニコ動画がついに契約、楽曲の二次利用が可能に:ITproより引用(2015年3月28日アクセス)

同様の契約をニコニコ動画はイーライセンス、JRCとも結んでいる。
この部分だけ見れば、確かに著作権管理団体と包括契約を結んだニコニコ動画には音楽を自由にアップできると理解できなくもない。
しかし実は単純にそうだとは言い切れない。締結日が4月1日だから嘘です、とかいうふざけた理由ではない。
引用元の続きを読めばしっかり書いてあるのだが、長ったらしく漢字が多くて読む気にならないという人もいるだろう。
だから最初の「JASRACが管理する音楽著作物を使用した動画を、ニコニコ動画へ自由に投稿可能になる。」だけを読んでブラウザバックしてしまうと気づかない次の2つの点に気をつける必要がある。

 まず使用しようとしている楽曲が、動画サイトが契約を結んだ団体の管轄かどうかということ。
JASRACは間違いなく日本で最大の音楽著作権管理団体で、かつイーライセンスやJRCとも契約を結んでいるニコニコ動画の契約はほぼすべての楽曲をカバーしていると言っても過言ではない。
しかし、これら3つの団体のいずれにも権利の管理を委託していない権利者も少数ながら存在する。
であるから、BGMとして楽曲を使用する前に、その楽曲が、投稿しようとしている動画サイトが契約している団体が管理する曲か否かということを確かめる必要がある。例えばJASRACであればJASRACの作品データベース検索サービスで検索することができる。

 データベースでヒットしたからといって安心はできない。当該の団体が権利を管理しているというのはインタラクティブ配信の区分について管理していることを指す。上述のJASRACデータベースでは「配信」の欄が該当する。
演奏や出版についてはJASRACに委託しているが、インタラクティブ配信については管理を委託していない、という楽曲も存在するため、使用しようとする楽曲がインタラクティブ配信についても管理委託されているか確認が必要なのだ。

 1-2.
 ここまででお腹いっぱい感はあるだろう。だがまだ気をつけなければならないことは続く(笑)。
先ほどの引用元を読み進めるとこんな記述がある。

 ただし、他の動画投稿サイトと同様、市販の音楽CDの音源をそのまま二次利用することはできない。

ニュース - JASRACとニコニコ動画がついに契約、楽曲の二次利用が可能に:ITproより引用(2015年3月28日アクセス)

!?という感じだろう。音楽を自由に使用できると思ったら、CD音源はそのまま使えないときた。どういうことか。
これについてはニコニコ動画公式の音楽著作物及び音楽原盤の利用に関するガイドラインがわかりやすい。


CD音源には、楽曲の著作権とはまた別の権利が存在しており、これらを利用する場合には、全ての権利者からの許諾を取る必要があります。権利者からの必要な許諾を受けることなく、CD音源の全部、または一部を動画に利用して「ニコニコ動画」にアップロードすることは出来ません。
音楽著作物及び音楽原盤の利用に関するガイドラインより引用(2015年3月28日アクセス)

この説明は非常にわかりやすい。「楽曲の著作権とはまた別の権利」という表現がとてもわかりやすい。
そのわかりやすい説明を(かえってわかりにくく)解説すると、この権利のことを著作隣接権という。
曲とは別に、演奏や歌声や録音という曲に付随するものに与えられる権利だ。
なんのこっちゃという感じだが、ざっくり言うと著作権は楽譜、著作隣接権はそれを音楽として実際に演奏されたものに対する権利くらいに理解するとわかりやすいかもしれない。
著作隣接権はレコード会社などが保有している。

 先ほどの話と突き合わせると、例えばニコニコ動画なら、JASRAC管轄の曲を利用するのは問題ない(著作権について包括契約を結んでいるから)が、CD音源を使うには、それとは別に著作隣接権保有者との契約が必要になる、ということだ。
この部分に関する認識が非常に甘いと感じた。わかりにくいし。
上記引用元によればニコニコ動画はエイベックス、ワーナーなどと契約を結んでいるため、これらの会社が著作隣接権を持つCD音源は利用することができる。
ただし、契約のない会社が権利を持つ楽曲に関しては、CD音源を使用することはできない。JASRACなどの著作権管理団体との契約に基づいて、著作隣接権を侵害しない形(MIDIで打ち込むとか、自分たちで演奏するとか)でなら利用することができる、ということになる。

1のまとめ
使用したい楽曲が、動画サイトの契約した管理団体のインタラクティブ配信の管理に含まれているか確認しなければならない。
CD音源をそのまま利用する場合は、動画サイトが著作隣接権保有者と契約しているかどうかも確認しなければならない。

2.ボーカロイドの曲はアマチュアの人が作ってるし使ってもいいっていう雰囲気があるって聞いたけど?
 2つの点で認識が甘い。まず1つは、作者がアマチュアだろうが著作権は存在するということ。確かにアマチュアだから財産権としての性格が弱いということもあり、だからこそ「ボカロは使ってもいいという雰囲気」みたいなものが蔓延しているが、だからといって著作権フリーというわけではない。

 そしてそもそもボーカロイド界隈が単なるアマチュアの域を飛び出しているということ。
今やボーカロイド楽曲を収録したCDは大量に存在し、CDショップに行けばわかるが棚をいくつか埋めるくらいの量がある場合さえある。
CDが売られたりレンタルされてりしているということは、(同人でなければ)背後に企業が存在するということになる。
こうなってくるとただ趣味の世界だったから二次利用が許される雰囲気がある、などとは言っていられない。
場合によっては作者の手さえ離れかけている場合さえ存在する。例えばこんな事例。作者が自分の作った曲をYoutubeにアップしたら、その曲を収録しているCDの販売元が削除申請したということらしい(Twitterソースのため確度は低い)。
リンク先は「【これはひどい】」などと煽っているが、別にひどくない可能性もある。作者とCDの販売元でどのような契約が結ばれているのかがわからないからだ。
要は、作者が自分の曲の二次利用を喜ばしく思っても、(作者とCD販売元の契約次第では)それが許されない可能性もある、ということだ。

2のまとめ
ボカロだからOKは通用しない。他の楽曲と同様に考える必要がある。


以上2点が私が数年前から感じていた、動画作成の際に音楽を使うことについての誤った認識の風潮だ。
ここから先はより一般的に私が現在感じていることになるので、物好きな方以外はつまらない話になってしまうと思う。
というか、あまりに長文が過ぎてそれこそ物好きな人以外ここまで読んでいない説もある。

ここまで読んで、そして私は書いて思うのだが、正直面倒臭すぎるのだ。この文を読むことが、ということではなくて(それもそうなのだが)著作権関連の制度が、ということだ。
色々知識をつけて細心の注意を払っても、何か一つ見落とすと権利を侵害してしまう可能性もある。
しかし、メイプル動画アップしたらBGMで使った曲の権利侵害してて逮捕されました、なんてことになったら末代までの恥だが、そんな話はまず聞かない。
それはどうしてかというと、みんな大好き暗黙の了解というやつがあったからだ。

レコード会社からすればCDが売れるかどうか、ということが大事なのだろうと思う。仮にメイプル動画のBGMにCD音源の全部や一部が使われていて、それをダウンロードしてipodに入れ、これで満足だからCD買ーわない、なんて人はまずいないだろう。何が面白くてデンデンが倒されてデンデンの殻をドロップした音とともに音楽を楽しめるだろうか。だから場合によってはこの権利侵害は放置され、対処されるにしても削除されるくらいだ。
(もちろん、だから権利侵害していいとは言っていない。ただ現状としてはそうなっている、と言いたいだけだ。)

ここから、話を音楽からゲームへと移していきたい。
音楽はまるまるアップロードされるとCDの売り上げに響くかもしれないが、(メイプルのようにSSのアップについて明言されていない)ゲームのプレイ動画は売り上げ促進につながると見る向きもある。
(ただし、これを企業側が言うならまだしも、ユーザー側が声高らかに唱えるのは盗人猛々しい。某動画ユーザーに多い印象だが…)
そこで、ストーリーのムービーを含まなければOK、発売直後じゃなければOK、のような暗黙の了解でここまで綱渡りしてきたのだ。

 企業側にもやはり、宣伝になるという考えがあったから、こうしてうまいことやってきたわけだ。
「鉄拳」シリーズのプロデューサー、原田勝弘氏はTwitter上で鉄拳のプレイ動画について問われ以下のような発言をしている。

以前別件で説明しましたが、こうした著作物の配信や二次創作などは例えば権利元の法務部(や問い合わせ窓口)に正面から質問すると「厳密にはダメです」という杓子定規な回答が返ってきます。
(中略)
逆を返せば現時点の法律では著作権に関わるものは版元からケチをつけない限り違法化されません。
で、ここからは現実的にどうなのかという話ですが、
「鉄拳の場合」とあえて限定しますが、鉄拳はゲームの特性上、大会の映像配信やユーザーコミュニティの盛り上げとしての配信を「広告宣伝」と「みなして」います。
(中略)
用は、こちら(版元)のさじ加減ひとつです、というのが一般論です。
(中略)
ですので、よほどの逸脱行為がない限り、こちらから物言いをした事はありません。

原田氏のTwitLongerでの発言より抜粋(2015年3月28日アクセス)

大事そうなところを抜粋したが、偏っていたらまずいので是非抜粋元の全文を読んでいただきたい。
要は「よほどのことがなければ動画については黙認。ただその“よほどのこと”があれば対処しますよ。」ということになるだろう。
「動画アップしていいよ!」と明言しないのは、結果として悪影響を及ぼすような動画がアップされた場合に対処するカードがなくなってしまうから、ということなのかもしれない。
だから暗黙の了解でうまいことやっていきましょ、ということになる。

鉄拳は格闘ゲームなのでその傾向が特に強いと思うのだが、PS4の登場でゲーム全体で大きく流れが変わった。PS4から直接TwitchやUstreamのようなサイトで配信できたり、YoutubeやDailymotionなどにアップロードできるようになったのだ。
PlaystationExperienceなどのイベントではゲームソフト開発者がこの機能に対して好意的な発言をしたり、暗黙の了解は明言に少し近づいたとも言える。
開発側はゲームの全部または一部分に配信や動画キャプチャの禁止区間を設けることができるので、配信やキャプチャが禁止されていない部分については動画を公開してもいいという反対解釈さえ可能になる。
しかしそれでもなお、実は「明言」はされていない場合が多い。

 ユーザーは動画をアップし、メーカーはそれが宣伝になるとみなせば黙認し、悪影響だと思えば削除申請をする。
今のところ、明言なき暗黙の了解のもとにゲームの動画に関してはうまくいっていると思う。
では何故こんな長文を今まで書いてきたかというと、今後うまくいかないかもしれないからだ。

その理由はTPP。「TPP?農業の問題でしょ?」というのが多くの意見で、「いや違う、実はいちばん問題なのは保険だ」と言う人もいる。一般的には全然話題になっていないのが著作権に関する問題だ。
TPPでは知的財産についてのルールも参加国で統一しようとしていて、その議論が行われている最中なのだが、その中に著作権侵害の非親告罪化の議論がある。
親告罪というのは被害者からの告訴があってはじめて訴訟になりうる罪で、現在の著作権侵害はこれにあたり、著作権者が告訴しなければ訴訟ははじまらない。
これを非親告罪にしよう議論がTPPで行われているとされており、そしてその内実は秘密交渉なのでわからない。

 もし非親告罪となるとどうなるかというと、今までゲーム動画はメーカーとユーザーの暗黙の了解によって、よほど悪質でなければ告訴などなく穏便に済まされていたが(ゲーム動画以外にもMADなども当てはまるだろう。)、非親告罪化、すなわち被害者の告訴なくとも無関係な人間による告発や検察の告訴で訴訟がはじまるようになれば、現在の暗黙の了解によるバランスは崩れてしまう。
極端な話、気に食わないやつのアカウントを調べて、著作権侵害を見つけたら告発したろ!みたいな事例が出る可能性さえある。
Twitterなどの普及で私達は以前よりも格段に簡単に画像や動画をアップできるようになっている。
ゲーム中に面白いシーンがあってスクリーンショットをTwitterにアップしたことがある人もいると思うが、もしそのゲームのメーカーが画像のアップに関して黙認しているのが現状なら、非親告罪化がなされると刑事責任を問われる可能性さえある、ということだ。
そして前述のように著作権関連の制度は難しく、ひょっとすると気づかないうちに著作権を侵害してしまっている可能性もある。それも非親告罪化がなされれば訴訟の対象になってしまう可能性がある。

これは恐ろしいことだと思う。
だからといって「非親告罪化すんな!」などと主張しようとは特に思わない。それは官僚や政治家がアメリカと綱引きして(少なくとも、綱引きするフリをして)決めることだと思っている。主張することが無駄だとは思わないが、その主張に効果があるとも思えないからだ。
逆に私がお願いしたいのは、ゲームメーカーなどの今まで暗黙の了解を保ってきた著作権利者に対して、だ。
いくつかのゲームでは既にプレイ動画のアップを条件付きで明確に許可している。GE2RBもそう。
暗黙の了解がうまくいかなくなる可能性がある今、暗黙の了解から明言へのシフトが必要なのではないか、というのが私の考えだ。



おわりに

ここまで引用部分込みで7000字も書いたらしい。読んでくれた方には感謝。
最初はふんわり書いて終わらせるつもりだったのだが、勢いでゴガガガッと書いてこの文字数になってしまった。推敲も一応したが、いかんせん文字数が多くて見落としもあるだろうし、甘い表現もあると思うので継続的に修正したいと思う。
最初にも書いたように私は法律に関して素人なので、誤りがあれば指摘していただけると非常にありがたい。というより、もっと詳しい人にわかりやすく書いてもらいたい。


初稿:2015/03/28
加筆:2015/03/29
修正:2016/05/08

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